ある家族のお話です。同世代の友人が相次いで亡くなったことをきっかけに、A男さんは自分の死後の遺産分割について考えるようになりました。最近では、遺産分割争いで、今まで仲の良かった子ども達が骨肉の争いを繰り広げるという嫌な話も耳にします。A男さんは、自分の子ども達はそのようなことにはならないと思ったものの、念のため、遺言を書いておくことにしました。
そこで、インターネットや書籍などで遺言書の書き方を調べ、いざ、「遺言書を書こう!」と紙と鉛筆を用意してみたところ、ふと疑問に思います。「このまま鉛筆で書いてもよいのか。それとも書き直しがきかないペンでないといけないのか。」
友人達に電話で聞いてみたところ、「鉛筆でもいいんじゃない?」という人と、「簡単に消しゴムで消えてしまう鉛筆だと遺言自体が無効になる。消せないペンじゃないとダメ。」という人がいて、A男さんはますます混乱してしまいます。
自筆証書を作る場合の筆記用具は,ペンでなければならないのでしょうか,それとも鉛筆でもよいのでしょうか?
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自筆証書を作る場合の筆記用具について,ペンでなければならないのか,それとも鉛筆でもよいのかという質問をよく受けます。
ペンだと間違ってしまったら,鉛筆のように消すことができないので,また,一から書き直して書かなければならないのは面倒くさいと思うからのようです。
法律では,使用する筆記用具について制限はありませんので,ペンで書いても鉛筆で書いても,自筆証書遺言の効力に変わりはありません。
しかし,よく考えてみてください。
家族への最後のメッセージである遺言を書くのですから,鉛筆で下書きをした上でペンで書くくらいの心構えがあってよいはずです。
また,誰かに偽造されたりしないためにも簡単に消すことができないペンのほうがよいでしょうし,保存の観点からも,鉛筆よりもペンのほうが劣化しにくいと言えます。
よって、法律では制限がないものの,やはり、ペンで書いたほうがよいように思います。
もっとも、以前のブログでも書きましたが、自筆証書遺言は,紙と筆記用具と印鑑さえあれば,いつでもどこでも作成できるという点で非常に便利ですが、法律で定められた要件を欠くとして無効となる場合も数多くありますので、法律家の観点からすると、時期を見て公正証書遺言の作成を考えてみることをお勧めします。。
その際には、ぜひ、法律の専門家である弁護士に気軽にご相談ください。あなたの立場に立った適切な遺言作りをアドバイスをいたします。